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むかしむかし、あるところに猫の王さまがいました 彼はとても勇敢で、誇り高く、決して仲間を見捨てませんでした 彼が戦場に出ると常勝無敗……猫の天敵達も彼の前では赤子同然です 誰も彼もが憧れて、みんなの人気者でした 王さまと彼の仲間達は、平和を守るために悪い敵と戦ってきました 猫の国に攻めてくる敵は、とても大勢いるのです そんな戦い続けたある日、猫の王さまは思いました ―猫の国に攻めてくる敵を倒しても倒しても、いなくならないのは何故だろう?― 彼らは自分達の国を守っているだけです お世辞にも猫の国は豊かとは言えず、占領する理由も見当たりませんでした それでも、どこからか敵が出てきます 敵を倒した後、一時の平和は訪れますが 真の意味で平和になったことはありません でも、王さまに深く考える余裕はありませんでした 考えるよりも誰かを救うために、その牙で敵を切り裂いてきました そして幾百の敵を倒してきたある日……最後の敵がやってきました その敵は「わるいユメ」 「わるいユメ」は、とても大きいような小さいような真っ黒な闇で、何にでも化けました 仲の良い隣人が、ある日突然、取って代わられみんなが疑心暗鬼になりました そんな他人を信用できない状況です。彼の仲間も次々と食べられてしまいました 王さまも、多くの仲間を助けようとがんばりましたが どこからともなく、際限なくでてくる「わるいユメ」には敵いません そんな「わるいユメ」を倒すため、王さまは決心したのです 国の全てを守るため、世界と契約し「よきユメ」になろうとしました それは生物の理からはずれ、それ以上の……ナニカになるということです 生き残った仲間達は、そんな尊い意思を持つ彼を尊敬し、崇めました そして「よきユメ」となった彼は、世界の真実をほんの少しだけ知りました その真実を知った時……王さまの長い長いの戦いが…… ……守ろうとした国と世界を、壊す戦いが始まったのです ~猫神神話「アルゴー・ナウタイ第一巻」序章より抜粋~ 第三話 「英雄戦記 ~東方三王国における伝承~」 ―??世界 どこかの王国 まだ名前のない草原 ― 見た事もない光景が映し出されている。 火を噴き、翼を持つ、天翔けるトカゲ―ドラゴン―と戦っている3人の人間と1匹の猫…… それはまるで、神話の伝説や空想の中の御伽噺のような闘いが繰り広げられている。 戦っている3人の誰もが、武器を手に持っているが……銃火器ではなく まさしくファンタジー世界の、剣・弓・杖を手にしている。 そのようなチンケな武器で、自身の数十倍はあろうかという巨体と渡り合っている。 無論、この世界でもこの光景は異常であるが、 それを可能としているのは……傍らにいる1匹の猫にある。 見た目は猫だが猫にあらず……彼を呼ぶならば「よきユメ」と呼ぶべきだろう。 彼は人間の側にいるだけで、一緒に戦っているわけではない。 唯一、していることは歌っているだけである。 その歌こそが、人間の力になるのである。 彼もその原理までは理解しきれていないが、隣人を救うためにこの力がある。 どれだけ攻撃しても、あきらめることなく向かってくる人間達に業を煮やしたのだろう。 ドラゴンは一際大きな息を吸い、特大の炎を食らわせようとしてきた。 3人の人間達は追い詰められ逃げ場もなく、全員が炎に包まれるしかない状況だ。 その先で彼らの見たものは、ただ一面の赤い光の…… ……その夢から、ニーギは目が覚めた。 製作会社「エニックス」 ゲーム名「ドラゴンクエストシリーズ」より BGM「おおぞらをとぶ」[[http //www.youtube.com/watch?v=zfb8KUTYHm8&feature=related ―AMS総合基地 サンフランシスコ本部 地上3階 AA隊準備室― 準備室の大総統席、机でうたた寝をしていたニーギは不機嫌な声で鳴いた。 その理由は、自身の生き方を大きく変えた戦争を夢に見たからだ。 そもそも、自分達が負けた夢を見て、気分が良くなる訳がない。 そんな気分を変えたいのだろう――ニーギはAMS総合基地にいる 友に会うため、机から降りる。 そう言えば、その彼から頼まれたことがあったような気がするが…… 歩いているうちに思い出すだろうと考え、部屋を後にする。 彼の名は、ニーギクス・エマ・ブフラエラ……三人の親友の名前を繋げたものだ。 彼を呼ぶ名は数多く、様々な伝承も残っている。 例えば、長靴の国より来る客人、猫神族の英雄、猫神族の王にして列王の一柱 猫岳の王、ゴージャス・ブルー、猫の神様などなど…… かつての彼は、その多くの名に恥じぬ英雄だった。 だが、いかに英雄であろうとも、無敵ではなかった。 そんな彼が敗北し、逃げるようにたどり着いた先に……けもにゃぁがいた。 ニーギの所属していた陣営は全滅し、敵からは死んだと思われているのだろう。 特に追手もなく、もはや彼自身の心も折れている。 彼が行動することは稀で、特に生きる目的もないまま死ぬ度胸もなく、 気に入った者に少しだけ手助けするくらいだ。 ニーギはAMS総合基地の中庭まで来ると、辺りを見回しあるぬこを探す……ほどなく見つけた。 目当ての人物は当然、この世界で知り合った友、けもにゃぁである。 この世界に逃げ込んだニーギを、介抱し世話をしてくれたのがけもにゃぁであった。 「にゃ~ご (調子はどうかな?けもにゃぁ君)」 気のない鳴き声で尋ねるニーギ……このまま散歩にでも誘いそうな勢いである。 そんな彼を見たけもにゃぁは呆れつつ、多少の苛立ちがある。 それもそのはず…… 「ニーギ殿……我が依頼した、トンヌラの動向調査はいかがなされた?」 苛立ちを隠さずに、けもにゃぁは尋ねる。 トンヌラの裏を調べるために、彼がニーギを通してAA隊を動かしたのだ。 そんなAA隊をまとめる立場である彼がこの体たらく……苛立つなという方が無理である。 しかし、相手は数千年を生きる猫の神様……自分のペースを崩さずに 「にゃん! (そんな話もあったが、今日はこんな雲一つない晴天の日…… 日向ぼっこをしようではないかッ!)」 この調子である。けもにゃぁも彼との付き合いは長いが、 いまだにニーギのこういった態度には慣れない。 よく言えば泰然自若、悪く言えば人に合わせない そんな性格と言えばそれまでだが、今回の依頼は緊急を要するものだ。 「そんなことをしている暇はないッ!!今回ばかりは言わせてもらうが、 何故、あなたはいつもそんな態度なのだッ!!それほどの力がありながら……どうして……」 勢い良く言ったはいいものの、最後の方は声が掠れている。 以前、一度だけニーギが戦っているのを目撃したときに思った。 ―自分もそれなりに力を持っているとは思っていたが、アレには敵わない……と― そんな彼が、日々何をするでもなく、時間を持て余している。 それが許せないということもあった。 しかしけもにゃぁ自身は、ニーギが何故ここにいるのか理由を知らない。 彼の何一つを知らないのは、ニーギが何も話さないからだ。 無論、ある程度の予想はしている。普段の会話からでも性格以外に 生まれや育ちを予測できるのだが……その予測は荒唐無稽な御伽噺になってしまう。 一体、誰が信じるというのだろう……違う世界からきた神様? の御伽噺なんて…… 「にゃ~ん (真面目だな……けもにゃぁ君は。そんなに急いでも、事を仕損じると思うが そこは君がうまくやるだろう。どれ……しばし待て)」 そう言うとニーギは目を閉じ、むにゃむにゃと何事かを呟いた。 見た目ではわからないが、ぬこぬこ通信と接続中である。 ぬこぬこ通信は元々、けもにゃぁが世界を旅したときに出会った仲間たちとの 連絡手段でしかなかった。しかし通信精度はそれぞれの力量に左右されるため よく通信不能になっていた。そこで人間たちの先端技術を使い 独自のネットワークを構築していた。普通ならば、そのようなウイルスモドキは 駆逐されるだろうが、ニーギが手を加えることによってぬこぬこ通信は その存在を発見できないようにされた。 ネットワーク自体は人間のそれと同一だが動力源が違う。 人間は電気を使い構築したが、ぬこぬこ通信の動力源は魔力である。 その魔力を担っているのがニーギである。 これならば個人の力量に左右されないので安定性もある。 無論、全世界のぬこ達の魔力を賄う必要があるため、途方もない力量が必要であるが。 5分程たっただろうか、まるで寝ているように通信しているニーギが目を開け けもにゃぁに結果を伝えた。 「にゃにゃん! (一昨日の夜に電話記録が残っているな。相手は噂のゲゼルシャフトの首領 内容は新型サイボーグのテストがしたいから、適当な部隊を派遣しろ……ということらしいな 見返りとして、その新型サイボーグを優先販売するようだ 派遣する部隊は、3時間後に出発する予定だな)」 けもにゃぁはその情報を聞き、驚きと先程とは比較にならない程の怒りがこみ上がる。 尋ねるニーギにも、口調が荒くなってしまう。 「それではまたしても仲間達が、死地に送られるではないかッ!! あなたは……何とも思わないのかッ! 無益な命が消えていくのをッ!!」 その言葉を聞き、ニーギはあることを思い出した。 かつて、全てを守ろうとして失敗した誰かを…… しかし今は、けもにゃぁを安心させるために今後の作戦を言う。 「にゃん (安心したまえ……既に、AA隊がゲゼルシャフトの本部に向かっている 早ければ、今日の夜にでも襲撃するだろうな)」 その言葉を聞き、多少疑いながらもけもにゃぁは信じることにした。 今までも、嘘だけはついたことがなかった。彼の発言はわからない表現も多くあるが 意味がないことは言ってこなかった。 「大丈夫なのか? いくらAA隊でも情報がない新型サイボーグ相手ではどうなるか……」 心配をするけもにゃぁだが、逆にその姿を見て気遣うニーギがいる。 遠い目をして空を見上げ、かつての自分とけもにゃぁを重ねた。 「にゃおう (この世界での友よ……彼らに任せたからには信じて待つのだ)」 ―かつて私にはできなかったが、君にはできるはずだ……― その最後の言葉は出さずに答える。 そんなニーギの真意がわからないけもにゃぁは、なおも問いかける。 「それは判るが……しかし、我にもできることはあるはずだ!! サイボーグのような、自然の摂理に反する兵器ならば、このクラウ・ソラス・マカサウァルで 光に還しても、問題ない!! 」 腰に差してある鞘から剣を抜き、気炎を吐くけもにゃぁ…… その姿を見たニーギは、あるデジャブに襲われる。 ひどく懐かしい気持ちを思い出したニーギは、彼が道を間違えないよう とある昔話を聞かせることにした。 「にゃお~ん (そうだな……その行動をする前に、ひとつ老人の昔話に付き合ってもらおうか)」 今すぐにでもAMS中庭から飛び出そうとしているけもにゃぁに待ったをかける。 普段なら無視したかもしれないが、ニーギの昔話が気になったけもにゃぁは足を止める。 そのまま彼に向き直り、おとなしく話を聞くことにした。 むかしむかし、あるところのある国に、名前のない英雄がいました 英雄はとても勇敢で、誇り高く、決して仲間を見捨てませんでした 英雄が戦場に出ると常勝無敗……どんな敵も彼の前では赤子同然です 誰も彼もが憧れて、みんなの人気者でした しかし、倒しても倒しても……次から次に、別の敵がやってきました どんな敵が来ようとも、英雄は国を守ってきました その姿を見た国民達は、さらに英雄を讃えました 英雄はそんな声を聞きながらも、自分に満足しませんでした それは自分に憧れて、一緒に戦ってくれる仲間が大勢いたために 敵との戦いで、死んでしまう仲間も大勢いたからです 英雄は、誰にも死んでほしくなかったのです だからこそ、誰よりも強く、何者にも辿りつけない境地にまで行きました 国民達は讃えます……どれだけの強さを持とうと、決して驕らず、 さらなる高みを目指す彼を尊敬します ある日英雄は決意しました この国の全てを守る……だから安心しろと 国民達は安心します……英雄の言葉に嘘はないからです それからです どのような戦争でも、英雄一人でがんばり仲間が死んでいくことはなくなりました 共に戦っていた仲間も彼に任せ、次第に戦う者が少なくなっていきました そしていつしか、英雄は戦場にひとりぼっちになりました 全てを守ると誓ったのに、その周りには何もありません そんな彼を、おかしいと思う国民もいませんでした なぜなら、英雄は全てにおいて完璧で問題なんてなかったから そんな何か歯車が狂った国に、最後の敵が現れました 見たことも聞いたこともない、恐ろしい敵です 多くの国民が、その敵に食べられました みんなが不安と絶望に苛まれ、その矛先を英雄に向けました ―みんなを守るって言ったじゃないか!! 多くの仲間が死んでしまったぞ― ―どうしてくれる!! 兄弟が……あいつらに食われちまったんだ!!― ―返して!! わたしの息子を……返してよ!! 守るって……言ったじゃない!!― みんなから尊敬された英雄は、もういません みんなからやり場のない憎しみと怨嗟がくるだけです それでも英雄は言います……自分を信じてくれ、必ずあの敵を倒してみせる……と ―そうだ!! お前が言ったんだ!! やってみせろ!!― ―そうよ!! わたしたちみたいな力のない者を救ってよ!!― みんな、口々に呪いを囃し立てます……それが英雄という言葉を使った 体の良い「イケニエ」だということだと、思わずに…… そして英雄は決意します みんなと国と……世界を守るユメになることを…… 「つまり、我がそのような向こう見ずなことをすると思っておられるのか?」 呆れながらも、けもにゃぁは聞いた。 まさか、ここまで荒唐無稽な話を聞かされるとは思っていなかったからだ。 そんな話をしたニーギは、いたって大真面目な顔をして 「にゃお! (そこまでは言わぬが……何、老婆心というものだよ)」 ため息をつくけもにゃぁ…… どうやら自分は、この老猫にかなり無鉄砲なものと思われているらしい。 ならば、その認識が過ちだとわからせよう。 腰に差した剣を再度抜刀し、天に掲げる。 「ニーギ殿……それは杞憂というものだ、自分の力は把握しているつもりだ 我はこの剣と各地にいる戦友に誓って、仲間と共に戦うつもりだ」 その光の剣を、懐かしそうな目で見るニーギ…… 現在の所有者である彼に、ある歌を伝えることにする 「にゃにゃん (君なら、そうするだろうな……どれ、君にひとつ、歌を送ろうではないか)」 ニーギはそう言うと、古い祝詞を述べる その歌を聞いたけもにゃぁは……歌詞が抽象的すぎて、訳がわからない顔をしている それは、このような歌であった。 ”夜が暗ければ暗いほど 闇が深ければ深いほど 歌は燦然と輝きだす それは互いを呼び合う声 いかなる闇も声は殺せぬ それは光の替りに与えられし 偉大なる力 二つからなる一つのもの 互いに引き合い 手をふれあう 聖なるかな 聖なるかな それは偉大なる 最強の力 その心は闇を払う銀の剣” 青にして空色……自身の根源を戒めた英雄は 今だ、眠り続けている。 To be continued
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偉業を成し遂げし者を讃え、送られる称号。 英雄の名を冠する人物としては黒滅竜と戦い、これを斃したランディ・クロウウェルが最も有名。 関連 勇者(ヒーロー) 英雄ランディ・クロウウェル ドレク・ヴェーン 日之壱番 山桜桃 ユーリ・ストクフィス 目次に戻る
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「英雄伝」
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―――僕の人生は人よりずっと長い。 だから、僕には人生が短いという感覚は理解できないだろうね。 きっと死の間際には、よく生きたと満足して笑って見せるよ――― 【英雄伝】 いつもどおりの日常を過ごしていたはずが、気が付けば手足は満足に動かず、 何日眠らなくても疲れを知らなかった肉体は、たった数時間の読書にすら倦怠感を主張するようになった。 衰えたのは肉体ばかりではない。 いつしか未来の自分に思いを馳せることはなくなり、過去の思い出にばかり浸る自分がいた。 新しい物を求めるよりも、今ある物で満足することを覚えた。 そうして悟った。もう、自分は長くないのだ、と。 幻想郷にある魔法の森。 その入り口に存在する店、香霖堂の店主こと森近霖之助は、老いた自分を振り返っていた。 すでに何年生きたのか覚えていない。 体力はすっかり落ちきってしまい、無縁塚への仕入れはもう何年も前から行っていない。 いや、すでに一日の大半を布団か椅子の上で過ごす毎日だ。 見た目の姿も随分と変わった。 もともと白かった髪は、色こそ変わらずとも艶を失い、顔には多くのしわが刻まれている。 だが、それらは決して不快感を与えるものではない。 重ねてきた月日が性格を丸め、その性格を反映した柔和な笑顔。 その笑顔を見て、かつて彼が仏頂面とからかわれていたことを信じるものはいないだろう。 そう、かつては霊夢や魔理沙にからかわれてばかりだった。 「……最近は昔のことを思い出してばかりだな」 自嘲気味の笑みを浮かべる。思えば随分生きたものだ。 結局、外の世界を目にすることは適わなかったが、自分の人生には概ね満足している。 外の世界のほかに心残りといえば、自分の集めた品の行方くらいのものだ。 特に草薙の剣と、大昔に無縁塚で拾い上げた彼の背丈ほどもある古時計。 死後の世界にそれらを持っていけるわけではないのに、と苦笑する。 「調子はどうだ?霖之助」 「慧音か」 霖之助が床に伏せるようになると、友人たちはそれまで以上に香霖堂を訪れるようになった。 今では当番制で家事や霖之助の生活を手伝ってくれている。 自分はどうやら自覚していた以上に彼女たちに好かれていたらしい。 「どうにも、昔のことを思い出してばかりだ。これはいよいよ天に召される時が来たかな?」 「またそんなことを言っているのか……」 半分人間の血が混じっている者の中で、霖之助の寿命が最も短かったらしい。 慧音や妖夢も年は取ったが、まだまだこれから人生の折り返し地点というところだ。 咲夜、霊夢、早苗、そして人間として生きることを選んだ魔理沙はすでに他界し、今はその子孫たちの時代になっている。 「魔理沙、霊夢、咲夜、早苗、か」 懐かしい名前に、慧音が応じる。 「随分久しぶりに聞いたな。懐かしいものだ」 「ああ。特に、魔理沙と霊夢には迷惑もかけられたが、彼女たちがいなければ、 君を始めとしてこんなに多くの友人を持つことはできなかっただろうね」 思い出話に華が咲く。 楽しい一時だったが、かつての自分はこんなにも過去の話で盛り上がることはなかったと、 霖之助は改めて自らの老いを自覚した。 「それではまた来るからな」 「ああ、楽しみにしている」 霖之助が夕食を済ませて床に就くと、慧音は少しのやり取りを済ませて帰り支度を始めた。 ふぅ、と一息ついて、霖之助はまた思索の海に沈む。 結局、自分はだれかと添い遂げることはなかった。 こんな自分でも、好意を向けてくれた女性は少なくない。 慧音とて、何度も人里で共に暮らそうと言ってくれた。 彼女たちに応えることができなかったのは申し訳ないが、誰かを選んでいれば、その分誰かと疎遠になっていただろう。 そうなれば、今のように多くの友人を持つことはなかったかも知れない。 そう思えば、多くの友人と知り合い、その内面に触れることができたこの人生も、悪くはなかった。 これなら、安らかに死んでいけるだろう。 若いころから、死について考えることが度々あった。 死、四、史、始。 これらは同じ、『し』という読みを持つ。 これは死した者の行く末を暗に示していると言えよう。 肉体は『四』大元素(火、水、土、風)へと分解され、世界の構成要素となる。 残した足跡は歴『史』となり、残された者たちの道しるべとなる。 そして、魂は輪廻の輪をぐるりと回って、また新しい生を『始』めるのだ。 ゆっくりと目を閉じる霖之助。 いつもは眠りが浅くて困るというのに、今日は易々と意識が沈んでいく。 まるで、死に誘われるかのように。 帰り支度を終えた慧音は、次に来る日を思い浮かべつつ、店を出ようとした。 だがその時、ありえないはずの音を聞く。店の古時計が、時間でもないのに音を上げた。 ボーン 振り返ってみるが、今の時刻は18時20分というところ。 ボーン 故障だろうか。霖之助が拾ってきてからというもの、こんなことは一度もなかったが。 ボーン すぐ止むと思っていたその音は、むしろ激しさを増して店内に響き渡る。 ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、 ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、 ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、 ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、 ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、 ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、 何かを訴えるように鳴り続ける時計を呆然と見ていると、かつて霖之助に聞いた話を思い出す。 この時計は、ある人物が生まれたときに送られたもので、その人物が亡くなる瞬間に音を上げた後、壊れて幻想入りしたものだと。 「……まさか」 慧音は部屋に戻り、横になった霖之助に声をかける。 いつもなら例え寝ていても起き上がってくる霖之助が、微動だにしなかった。 時計の音は、まだ止まない。 古時計の音は、届くはずがない場所にいる者の耳にも届いた。 いや、正確には耳に届いたのではない。 頭の中に直接響いたのだ。 最初は疲れているのか、それとも何かの悪戯かと思った彼女たちも、延々と続くその音に聞き覚えがあること、 そしてその音を何処で聞いたのかを思い出し、嫌な予感と共に香霖堂へ向かった。 朦朧とする意識の中で、霖之助はいよいよ自分の死を確信する。 周りには友人たちがいるはずだ。はっきりとはわからないが、声が聞こえたように思う。 しかし、死に向かう霖之助の体は、彼の意識をどんどん皆から遠ざける。 目は周りの様子を写してくれない。死ぬ時には皆の顔を焼き付けておきたかったのに。 耳が音を感じない。皆の声に囲まれて逝きたかったのに。 手足が言うことを聞いてくれない。死の前に、できれば握手の一つでも交わしたかったのに。 口は唸り声すら出そうとしない。皆に感謝の言葉を告げたかったのに。 鼻も利かなくなったようだ。住み慣れた家の香りを感じることすらできなくなった。 残酷なことをしてくれる。 自分に音も光もない孤独の中で死ねというのか。 死ぬ前に済ませておきたかったことは何もできないまま、 こんなに心配してくれている皆になにも伝えられぬまま、最期を迎えるのか。 いや、まだ残っているものがあった。 それは、触覚。 皆が自分に触れているのを感じる。 そして彼の能力は、蝋燭が最後に一際燃え上がるかのごとく、ここに来て進化を遂げた。 『道具の名前と用途がわかる程度の能力』 生命体の名前はわからなかったはずが、今では触れた手から皆の名前が流れ込んでくる。 頬に手を当てているのは紫。 口元で呼吸を確認しているのは慧音。 右手で脈を診ているのは永琳か。 両の肩口に水滴が滴ると思ったら、美鈴と鈴仙が泣いていたのか。 左手を包んでいるのは文の両手。 霖之助の能力はよりいっそう強く燃え上がる。 一人一人の声が肌に届くたび、なんと言っているのかまではわからずとも、それは誰の声だと教えてくれる。 長年付き合ってきた妖怪たちばかりではない。 年老いて穏やかになった彼を慕う人間たちも、わざわざ人里から大勢駆けつけてくれている。 部屋に入りきれないほどの人数が、霖之助に声をかけていた。 それは、本来存在するはずがない光景。 人と妖怪が、いがみ合うこともなく、一つの目的のために一堂に会している。 皆等しく、霖之助の死を悲しんでいた。 一際続いているのは古時計の音だったのか。そうか、君が皆を集めてくれたんだね。 ありがたい。自分なんかの死を、こんなにも大勢で惜しんでくれるとは。 僕は幸せ者だ。心の底からそう思う霖之助だが、困ったことにそのことで心残りができてしまった。 せめて皆に、自分は最期の最期で、幸福に包まれている事を伝えたい。 何もわからぬままに死んでいったのではなく、自分の生と死を見つめた上で受け入れて死んだのだ、と。 頼む、体のどこでもいいから言うことを聞いてくれ。すがるような思いで全身をもう一度確認する。 あった。 どうやら顔の筋肉は、まだ自分に味方してくれるようだ。 せめて、笑顔を残していこう。 よかった。まだ僕にも、できることが残っていてくれた……。 「脈が……止まったわ……」 永琳が霖之助の臨終を告げた。 泣き崩れるもの、 呆然とするもの、 必死に涙をこらえるもの、 反応はそれぞれだったが、誰もが霖之助の死に顔を直視できない。 しかし、そんな中でも誰かが声を上げた。 「……笑ってる」 その言葉を聞き、皆の視線が霖之助の顔に集まる。 脈が止まった瞬間、確かに無表情だったその顔は、いつの間にか笑顔に変わっていた。 そして、慧音の声が響き渡る。 「全く……。 自分が死のうとしているその真際に、私たちを安心させることを考えるとは、お前も本当に変わったものだ。 だが、残念だったな霖之助。お前の作り笑いなど皆お見通しだ。 ……この……大馬鹿者の……お人好し……め……」 慧音の両目から、大粒の涙が溢れ出す。 その視線の先に横たわる霖之助。 その顔に浮かんでいたのは、かつて自らが苦手と公言して憚らなかった営業用の笑顔。 霊夢が、魔理沙が、わざとらしいと揶揄した、ぎこちない『誰かのための笑顔』を、今再び霖之助は浮かべていた。 何時しか、時計の音も消えていた。 蝉がやかましく泣き叫ぶ、夏の日の夕暮れ。森近霖之助の時間は停止した。 そして、1つの物語が阿礼乙女の蔵書に加わる。 物語の題名は、『森近霖之助伝』。 人と妖怪両方の血を引きながらにして、どちらの道を選ぶこともなく、個人としての行き方を貫き、遂には人と妖怪の区別なく多くの友人を作った男の人生を伝える、『英雄伝』。 この物語に新たな一行が加わることは、もう、ない。
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題名 出版社 初版発行 荒俣宏 著者 ISBN amazon 征服王コナン≪英雄コナン・シリーズ≫ ハヤカワ文庫SF 早川書房 1970.08.31 団精二訳・解説 ロバート・E・ハワード(著) 4150100020 ★ 冒険者コナン≪英雄コナン・シリーズ≫ ハヤカワ文庫SF 早川書房 1971.01.31 団精二他訳・解説 ロバート・E・ハワード(著) 4150100144 ★ 不死鳥コナン≪英雄コナン・シリーズ≫ ハヤカワ文庫SF 早川書房 1971.04.30 団精二訳・解説 ロバート・E・ハワード(著) 4150100241 ★ 大帝王コナン≪英雄コナン・シリーズ≫ ハヤカワ文庫SF 早川書房 1972.06.30 団精二共訳・対談 ロバート・E・ハワード(著) 4150100608 ★ 復讐鬼コナン≪英雄コナン・シリーズ(別巻1)≫ ハヤカワ文庫SF 早川書房 1971.11.30 団精二訳・解説 デイ・キャンプ&ニューベリイ(著) 4150100438 ★ 冒険王コナン≪少年少女世界冒険小説(8)≫ 朝日ソノラマ 1974.01 団精二訳 ロバート・E・ハワード(著)
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龍素記号Cbスパークセル UC 水 コスト5 クリーチャー クリスタル・コマンド・ドラゴン 3000 ■ブロッカー ■S・トリガー ■このクリーチャーは攻撃することができない。 ■マナ武装5-このクリーチャーがどこからでも自分の墓地に置かれたとき、自分のマナゾーンに水のカードが5枚以上あれば、バトルゾーンにある相手のカードを1枚選び、持ち主の手札に戻す。 作者:ペケ ツイッターでも書きましたがこっちにも。 キューブリックを相手限定にしてみました。 名前 コメント -
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二十二英雄伝説とは、「Farland History -伝説の英雄-」の中に存在する、 ストーリー性の伝説のこと。 伝説の概要 遠い昔、世界は、どこからともなく突如として現れた 「魔王」と魔王の手下によって、支配されていた。 しかしそこに、一人の青年「ロザリア」が立ち上がる。 ロザリアは、世界の各地で、魔王に対抗できるだけの強さを持つ仲間たちを集め、 徐々にその力をつけていく。 そしてついに、ロザリアと21人の仲間たちは、魔王を打ち破り、 長く続いた戦いの決着をつけた。 しかし、魔王を打ち破ると同時に、ロザリアは行方不明となる。 残った21人の仲間たちは、ロザリアとともに英雄として称えられた。 また、荒廃してしまった世界の街々を修復する際に、 それぞれの街に英雄たちの名前がつけられた。 世界が徐々に本来の姿を取り戻す中、今度は、21人の英雄たちまでもが次々と行方不明になる。 「英雄たちは本当は別の世界の人間だった」などという憶測が世界中を飛び交うが、 結局、真相がわかることは無かった。 それから、それぞれの街にて、英雄たちが持っていたとされる 武器のレプリカを売り出すようになり、街の名前とともに、 英雄たちの伝説は語り継がれることとなる・・・。 英雄一覧 英雄の名前 対応する街 対応するレプリカ武器 勇者ロザリア ロザリア 勇者ロザリアの剣 戦士リベル リベル 戦士リベルの斧 賢者マラノ マラノ 賢者マラノの杖 騎士ペスタ ペスタ 騎士ペスタの槍 銃士ジュノ ジュノ 銃士ジュノの銃 守護者アンドロメダ アンドロメダ 守護者アンドロメダの矛 天使セレス セレス 天使セレスの弓 大魔道ウィンディア ウィンディア 大魔道ウィンディアの魔道書 格闘家ソミュール ソミュール 格闘家ソミュールの篭手 精霊パレス パレス 精霊パレスの針 忍者カーウェン カーウェン 忍者カーウェンの忍び刀 軍師イストリー イストリー 軍師イストリーの指揮棒 竜騎士シンフォニア シンフォニア 竜騎士シンフォニアの槍斧 司祭エレンシア エレンシア 司祭エレンシアの術符 召喚士ボグロム ボグロム 召喚士ボグロムの杖 傭兵ベゴン ベゴン 傭兵ベゴンの双剣 巨人フィレント フィレント 巨人フィレントの投斧 盗賊エヴァレイト エヴァレイト 盗賊エヴァレイトのナイフ 剣士ムジール ムジール 剣士ムジールの刀 雷撃士ハイランド ハイランド 雷撃士ハイランドの杖 天馬騎士セレナ セレナ 天馬騎士セレナの双槍 死神ルイン ルイン 死神ルインのノート
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龍素記号Th センテンボー クリーチャー(水) コスト3/パワー3000/種族:クリスタル・ドラゴン ■ジャストダイバー ■自分のドラゴンの召喚コストを1少なくする。ただし、1より少なくならない。 ■マナ武装2(水):自分のコマンドの召喚コストを1少なくする。ただし、1より少なくならない。 FT--龍素砲定式の最大火力314%は、元となった古代の龍脈術の奥義、龍素天地砲の最大火力に20%足りなかった。
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英雄【RARE BRONZE】 キャラクター 初期ステータス スキル 転生 AT DF Btp Skp スキル名 スキル効果 転生上限 変化 猿飛佐助 1070 1000 9 9 英聖スパークβⅠ [幻影]味方英聖属性のATを10%UP 2 無 黒田長政 1020 850 9 5 英聖シールドαⅠ [幻影]味方英聖属性のDFを5%UP 2 無 石川五右衛門 1050 900 8 6 導覇ブレイクβⅠ [幻影]敵リーダのDFを20%DOWN 2 無 島左近 1100 990 10 - 無 - 2 無 ハーゲン 1210 1080 10 9 英聖スパークβⅠ [幻影]味方英聖属性のATを10%UP 2 無 クリームヒルト 710 820 7 5 電脳クラッシュαⅠ [幻影]敵AI虚属性のATを5%DOWN 2 無 魏延 1310 850 10 - 無 - 2 無 小僑 860 930 11 5 英聖シールドαⅠ [幻影]味方英聖属性のDFを5%DOWN 2 無 劉禅 910 950 8 3 導覇スパークαⅠ [幻影]味方リーダのATを10%UP 2 無 柴田勝家 1110 640 9 3 導覇ブレイクαⅠ [幻影]敵リーダのDFを10%DOWN 2 無 バーチャ濃姫 1090 890 9 6 導覇シールドβⅠ [幻影]味方リーダのATを20%UP 2 無 バーチャ信長 1290 770 12 5 英聖スパークαⅠ [幻影]味方英聖属性のATを5%UP 2 無 バーチャ呂布 1100 1180 10 5 刻影サンクチュアαⅠ [幻影]味方のスキルマイナス効果を10%で無効 2 無 ちびサクラ 200 200 2 6 導覇スパークβⅠ [幻影]味方リーダのATを20%UP 2 無 ちび幸村 280 120 2 6 導覇クラッシュβⅠ [幻影]敵リーダのATを20%DOWN 2 無 バーチャ幸村 990 990 9 5 幻魔クラッシュαⅠ [幻影]敵幻魔属性のATを5%DOWN 2 無 バーチャサクラ 770 770 7 5 英聖スパークαⅠ [幻影]味方英聖属性のATを5%UP 2 無 ちび忠勝 180 260 2 6 導覇ブレイクβⅠ [幻影]敵リーダのDFを20%DOWN 2 無 バーチャ忠勝 1100 1000 10 5 幻魔ブレイクαⅠ [幻影]敵幻魔属性のDFを5%DOWN 2 無 サクラ 850 1000 10 5 電脳クラッシュαⅠ [幻影]敵AI虚属性のATを5%DOWN 2 無
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悪魔(デビル)メイデン UC 闇 (4) クリーチャー:ブレインジャッカー 1000 ■このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、闇のクリーチャーを2体まで、自分の手札に戻す。 ■マナ武装5:このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分のマナゾーンに闇のカードが5枚以上あれば、自分の山札を見てもよい。そうした場合、その中から闇のカードを1枚選び、自分の墓地に置く。 作者:viblord 収録パック DMZ-01 「神の魂を持つ者〈末裔証〉(ソウル・オブ・ゴッド)」 フレーバーテキスト 評価 名前 コメント